地方企業のリアルIT相談室 第65回
「無料でできます」が、一番高くつく。
「無料で作ったんですが、直してもらえますか?」
こんな相談を受けることがあります。
以前なら、無料で作ったものと聞けば、できることも限られていました。
見た目もそれなり。
機能も最低限。
少し触れば、どこか素人っぽさが見えたものです。
でも、今は違います。
無料のホームページ作成サービスを使う。
無料のツールを組み合わせる。
分からないところはAIに聞く。
文章もAIが整えてくれる。
画像も作れる。
コードまで書いてくれる。
その結果、見た目だけなら、プロが作ったものと区別がつかないくらいのものができてしまいます。
ホームページもきれいに作れる。
申込フォームも動く。
メールも送れる。
簡単な業務システムなら、普通に仕事で使えてしまう。
無料だから、大したものはできない。
そんな時代ではありません。
無料でも、プロ並みにできてしまう。
だから大変なんです。
最初から使えなければ、そこで止まります。
でも、見た目もきれいで、普通に動く。
それなら、そのまま使い始めます。
お客様にも案内する。
社員も使う。
入力したデータもどんどん増えていく。
半年、1年と使っているうちに、その仕組みが止められなくなります。
問題が起きてから、初めて相談になる
そして、ある日突然、問題が起きます。
画面が崩れた。
メールが届かなくなった。
ログインできなくなった。
サービスの仕様が変わった。
作った担当者が辞めてしまった。
そこで初めて、
「少し直してもらえませんか?」
という相談になります。
でも、こちらから見ると、もう「少し」ではありません。
何を使って作ったのか。
どこまで設定されているのか。
どんな考え方で組まれているのか。
どこを変更したのか。
その記録が残っていない。
バックアップもない。
作った本人も、細かいことは覚えていない。
こうなると、新しく作るより、今の状態を調べて元に戻す方が大変です。
それでも、最初は動いていたんです。
見た目もきれいだった。
普通に仕事で使えていた。
だから、問題が出るまで誰も困りません。
ここが厄介です。
AIに聞いたら、もっとひどくなった
さらに最近は、分からないところをAIに聞いて直そうとします。
AIに言われた通りに設定を変える。
コードを貼り付ける。
ファイルを書き換える。
それで直ればいいのですが、環境が違えば、うまくいかないこともあります。
もう一度AIに聞く。
別の方法を試す。
また違う場所を触る。
その結果、最初は一か所だけだった不具合が、二か所、三か所と広がっていく。
そして最後には、どこを触ったのかも分からなくなる。
正直に言えば、
「最初に相談してくれれば、ここまでにはならなかったのに。」
と思うことはあります。
でも、最初はプロ並みに見えて、普通に動いていたんです。
それなら、わざわざお金を払って相談しようとは思いません。
そこは責められません。
無料やAIが悪いわけではない
僕は、無料のサービスが悪いと言いたいわけではありません。
無料のツールも使います。
生成AIも毎日のように使っています。
昔なら専門業者に頼まなければできなかったことを、自分たちで試せるようになった。
これは本当に便利なことです。
ただ、作れることと、使い続けられることは別です。
見た目をプロ並みに仕上げることと、運用までプロ並みに考えることも別です。
不具合が出たときに戻せるのか。
担当者が変わっても使えるのか。
サービスが終わったときにデータを移せるのか。
何かあったときに、誰が責任を持って直すのか。
そこまで考えられているかどうかは、完成した画面を見ただけでは分かりません。
玉田さんって、結局何をしている人なんですか?
最近は、ホームページの相談を受けたはずなのに、気が付けばメールを直していることがあります。
システムの話をしていたのに、社内のネットワークを確認していることもあります。
AIの使い方を相談されていたのに、そもそもの業務の流れから見直すこともあります。
だから、
「玉田さんって、結局何をしている人なんですか?」
と聞かれることがあります。
僕もうまく説明できません。
ホームページ屋と言えば、それだけではない。
システム屋と言えば、それだけでもない。
AIの支援もしますが、AIだけを扱っているわけでもない。
ただ、会社で何か困ったことが起きたときに、なぜか僕に連絡が来る。
話を聞く。
原因を探す。
直せるものは直す。
直せないものは、次にどうするかを一緒に考える。
たぶん、僕の仕事はそんなものです。
「無料でできます。」
この言葉は間違っていません。
今は本当に、無料でもプロ並みにできます。
だからこそ、そのまま仕事で使えてしまう。
使えてしまうから、問題が見えない。
問題が見えないまま、止められない仕組みになっていく。
そして壊れたときに、一番高くつく。
無料で始めることは悪くありません。
AIに聞くことも悪くありません。
ただ、「もうよく分からない」と思ったら、それ以上触らないでください。
そこから先まで触られると、直す方はかなり大変です。
まあ、結局そこを何とかするのが、僕の仕事なんですけどね。
