連載|地方企業のリアルIT相談室 第22回
そのExcel、本当に壊れていますか?
先日、お客様からこんな電話がありました。
「玉田さん、Excelが壊れちゃったんだけど見てもらえます?」
ITの仕事をしていると、本当によくある相談です。
しかもだいたい急ぎです。
- 見積書が出せない。
- 請求書が作れない。
- 売上集計ができない。
つまり、
「今すぐ来てください」
というやつです(笑)
その日も名古屋方面へ向かう予定があったので、そのまま立ち寄ることにしました。
パソコンを開いて見せてもらうと、確かにエラーは出ています。
でもね。
長年こういう仕事をしていると分かるんです。
「あー、これExcelじゃないな」
って。
なんとなく嫌な予感がしました。
最近こういうことが本当に増えました。
ホームページの相談で行ったはずなのに業務改善の話になったり。
パソコンの設定で呼ばれたのに社内ルールの話になったり。
AIの相談を受けたのに情報リテラシーの話になったり。
気が付くと、
何屋さんなのか自分でも分からなくなる時があります(笑)
そして調べ始めたら、案の定でした。
Excelは壊れていなかった
結論から言うと、Excelは壊れていませんでした。
問題だったのは、そのファイルに組み込まれていたマクロです。
しかも、
- 誰が作ったのか分からない。
- いつ作ったのか分からない。
- どういう仕組みなのか分からない。
分かっているのは、
「昔いた人が作ったらしい」
それだけ。
聞けば、その担当者さんは何年も前に退職していました。
引き継ぎ資料はありません。
設計書もありません。
もちろん説明できる人もいません。
いやいや・・・
怖いのはExcelじゃなくてそっちです(笑)
中を見てみると、ボタンを押したらシートを作る。売上を集計する。帳票を出力する。いろいろな処理が組み込まれています。
ただ、その仕組みを理解している人が誰もいない。
結果として、
- エラーが出る。
- 原因が分からない。
- Excelが壊れたと思う。
という流れになっていました。
地方企業では珍しくない話
実はこれ、岐阜や名古屋周辺のお客様を回っていると本当によくあります。
特別な話ではありません。
むしろ、
「あるある」
です。
昔、パソコンに詳しい人がいた。
Excelが得意な人がいた。
業務改善が好きな人がいた。
そして頑張って便利な仕組みを作った。
その時は良いんです。
仕事も早くなるし効率も上がります。
問題はその後です。
- その人しか分からない。
- その人しか触れない。
- その人しか直せない。
そんな状態のまま何年も経つ。
そして退職や異動でいなくなる。
残された人たちは、毎日使っているけど中身は分からない。
ボタンを押して動けばOK。
止まったらお手上げ。
僕はこれを勝手に
「便利の借金」
と呼んでいます。
その時は便利になります。
でも情報共有をしなかったツケが、何年後かに回ってくるんです。
今回もまさにそんなケースでした。
本当に怖いのはExcelではない
Excelが悪いわけではありません。
マクロが悪いわけでもありません。
実際、僕も業務効率化のために使います。
問題なのは、
誰も中身を知らないこと。
例えば、
- 管理者が誰なのか分からない
- 元データの場所が分からない
- バックアップの有無が分からない
- 修正方法が分からない
- 引き継ぎ資料が無い
こうなると、トラブルが起きた時に対応できません。
そして会社は、
「システムが壊れた」
と思います。
でも実際には、
「仕組みを理解している人がいなくなった」
だけだったりします。
これはExcelだけではありません。
ホームページも同じです。
SNSも同じです。
サーバーも同じです。
最近増えてきたAIツールも同じです。
便利だから導入した。
みんな使っているから導入した。
でも誰も理解していない。
それでは、いつか同じ問題が起きます。
AI時代だからこそ必要な情報リテラシー
最近はAIの相談も本当に増えました。
ChatGPT。Gemini。Claude。
いろいろなAIが出てきています。
もちろん僕自身も毎日使っています。
便利です。
正直、仕事のやり方も大きく変わりました。
ただ、少し気になることがあります。
それは、
「AIが言っているから正しい」
と思ってしまう人が増えていることです。
でもね。
AIも普通に間違えます。
しかも結構自信満々に(笑)
昔は、
「ネットに書いてあったから正しい」
という人がいました。
今は、
「AIが答えたから正しい」
という人が増えています。
でも本質は変わっていません。
大事なのは、鵜呑みにしないこと。確認すること。比較すること。裏を取ること。
最近はSNSを見ていても、投資詐欺、副業詐欺、なりすましアカウント、フェイクニュース、偽サイト。本当に増えています。
しかもAIのおかげで昔より精巧です。
だからこそ、情報を見る力。情報を疑う力。情報を確認する力。
これがますます大切になってくると思っています。
ITの問題に見えて、本当は業務の問題
今回の相談も、最初はExcelのトラブルでした。
でも実際には違いました。
本当の問題は、業務の見える化ができていなかったこと。情報共有ができていなかったこと。属人化していたことでした。
ITの相談を受けていると、意外とこういうケースが多いんです。
パソコンの問題だと思ったら運用ルールの問題だった。
ホームページの問題だと思ったら社内体制の問題だった。
システムの問題だと思ったら情報共有の問題だった。
最近は、
「玉田さん、パソコン見てください」
と言われて行ったのに、最後は会社の未来の話をして帰ることもあります(笑)
正直、自分でもどこまでが本業なのか分からなくなることがあります。
でも、それだけITが経営や業務と深く結びついているということなんでしょうね。
結局のところ
ExcelもAIも便利です。
便利だからこそ、多くの会社で使われています。
でも、便利なものほど中身を理解していないと危険です。
特に中小企業は人数が限られています。
「あの人しか分からない」
が増えるほどリスクも増えていきます。
今回のExcelも壊れていたわけではありません。
見えなくなっていただけでした。
そして、これはExcelだけの話ではありません。
ホームページもそう。
AIもそう。
SNSもそう。
便利な仕組みほど、誰か一人の頭の中だけに入れておくと、いつか会社のリスクになります。
最近はAIの相談を受けることも増えました。
でも結局のところ、
大切なのはツールではなく、それをどう使うかです。
情報を整理する力。
情報を共有する力。
情報を見極める力。
これからの時代は、そんな力がますます重要になってくると思っています。
