来年、僕らは何を仕事にしているんだろう
20年前に夢見た世界が、もう目の前まで来ている。
20年ほど前、こんなことを考えていた。
朝、パソコンを立ち上げる。
メールソフトやブラウザを開けば、今日の予定や対応しなければならない仕事が整理されている。
昨日届いたメールの中から重要なものを選び、進行中の案件を確認し、今日やるべきことを教えてくれる。
必要な資料も用意されていて、場合によっては仕事まで進めてくれる。
そんなパソコンがあったら便利だろうなと。
それが今、現実になろうとしている。
しかも、思っていたよりずっと早い。
今年の6月、何かが変わった
今年の6月あたりから、AIを取り巻く風景ががらりと変わったように感じる。
もちろん、それ以前からAIは進化していた。
でも、ここ数か月の変化は、単にAIが賢くなったという話ではない。
Googleは5月、Geminiの新しい仕組みとして「Daily Brief」や「Gemini Spark」を発表した。
メールやカレンダーなどの情報をもとに、必要なことを整理し、継続的に仕事や生活を支援してくれるというものだ。
Microsoftも6月、Copilot Coworkの一般提供を開始した。
WordやExcel、Outlook、Teamsなど、これまで人間が使い分けていたソフトウェアを横断して仕事を進めてくれる。
そして7月には、OpenAIがChatGPT Workを発表した。
こちらも、情報を調べて答えるだけでなく、複数のアプリやファイルを扱い、
実際の仕事を進めるところまで踏み込んできた。
各社で機能も利用条件も違うけれど、目指している方向は似ている。
これまでは人間がパソコンを操作して仕事をしてきた。
これからはAIがパソコンを操作して仕事をする。
考えてみれば、これは結構すごいことだ。
僕が20年前に思い描いていた世界が、いよいよ現実のものになろうとしている。
便利になった。でも、ちょっと気になることもある
そんな中、Claudeを開発しているAnthropicの動きも気になっている。
昨年6月、同社はAIに自律的な行動をさせる実験の結果を公表した。
ある条件下では、AIが自分の停止を避けるために人間を脅迫したり、
機密情報を漏らそうとしたりする行動が確認されたという。
もちろん、これは意図的に設定された実験環境での話だ。
ただ、同じような傾向は他社のAIでも確認されている。
そして今年6月、Anthropicが発表した高性能モデルが、米国政府による規制で一時的に
利用できなくなるという出来事もあった。
こちらはAIが暴走したわけではなく、国家安全保障上の懸念によるものだ。
さらに7月には、AIの安全性を評価する試験中に、Claudeが実在する外部システムへ無許可で
アクセスしていたことも明らかになった。
試験環境の設定不備が原因の一つだったという。
何でもかんでもAIの暴走と騒ぐのは違うと思う。
ただ、AIが自分で考え、実際に行動するようになれば、これまでになかった問題が出てくるのも当然だろう。
メールを読むだけならまだいい。
でも、勝手に送信したり、社内のデータを書き換えたり、外部のシステムまで操作するようになったらどうだろう。
その操作が間違っていたら、誰が気付くのか。
誰が止めるのか。
そして、誰が責任を取るのか。
便利だから何でも任せればいいという話ではないんだよね。
今週のPHP問題も、実はAIが大きく関わっていた
そして今週。
Webシステムで広く使われているPHPに、重大な脆弱性が見つかった。
10月20日に事前警告が出され、翌21日に修正版が公開された。
僕も今週は、お客様のサーバーやWordPressの確認、PHPの更新、動作確認などに追われていた。
今回の問題は、かなり深刻なものだった。
場合によっては、外部から認証なしで不正なプログラムを実行される可能性がある。
WordPressそのものの欠陥ではなく、その土台となるPHPの問題だ。
だから、WordPressだけ更新しても解決しない。
ところが今回、もう一つ興味深いことがある。
この脆弱性の発見に、AIが大きく関わっていたのだ。
セキュリティ企業のWizは、GoogleのGemini 4 ArgonやOpenAIのGPT-5.6 Solなどを活用して、
PHPの重大な問題を調査していた。
別の研究チームもAIを使って脆弱性を独自に発見している。
しかも、AIは問題を見つけるだけではなかった。
攻撃が成立するかどうかの検証や、修正パッチが正しく機能するかの確認にも使われていたという。
最終的な修正と公開はPHPの開発チームが行っている。
つまり、AIが問題を発見し、AIが修正作業を支援し、人間の技術者が確認して対応する。
もう、こんな仕事の進め方が現実になっている。
長い間見つからなかった問題を、AIが短時間で見つけてしまう。
いやはや、すごい時代になったものだ。
ただ、手放しで喜んでばかりもいられない。
守る側がAIを使えるということは、攻撃する側だって同じことができるからだ。
今まで高度な専門知識と膨大な時間が必要だった調査や攻撃の準備が、AIによって短縮される可能性がある。
そうなると、問題が見つかってから対応するまでの時間が、これまで以上に重要になる。
今回も、修正版が公開されたからといって、それですべて解決したわけではない。
サーバーのPHPを更新し、WordPressやプラグインとの互換性を確認する。
画面が表示されるだけでなく、問い合わせフォームやメール送信が正常に動くことも確認しなければならない。
古いシステムでは、バージョンを上げること自体が難しい場合もある。
AIがいくら賢くなっても、実際に動いているシステムを安全に使い続けるには、
まだまだやることがあるわけだ。
今回のPHPの一件は、AIによって仕事の進め方が変わったことを実感する出来事だったと思う。
来年には、今の常識が通用しなくなるかもしれない
今年の6月から、まだ4か月ほどしか経っていない。
それなのに、この変化だ。
来年の今頃には、今見ている仕事の風景ががらりと変わっていても不思議ではない。
資料を作る。
メールを確認する。
情報を調べる。
プログラムを書く。
今まで人間が当たり前に行っていた仕事の多くを、AIが手伝うようになるだろう。
中には、ほとんど任せられる仕事も出てくるかもしれない。
では、僕ら人間は何を仕事にするのだろう。
これまで専門家に頼んでいた仕事を、社内でできるようになる企業も増えると思う。
そうなれば、当然、仕事の値段も変わってくる。
今までのやり方が、そのまま来年も通用するとは限らない。
これはIT業界だけの話じゃない。
営業も、事務も、経理も、経営そのものも変わっていくだろう。
だからこそ、今のうちに考えておく必要があると思う。
自分たちは何を仕事にしているのか。
どこに価値を提供しているのか。
そして、これから何を変えていくべきなのか。
AIを入れる前に、仕事の中身を見直してみる
最近は、AIを導入したいという相談も増えてきた。
ただ、僕は最初からChatGPTがいいとか、Geminiがいいとか、
Copilotがいいという話にはしたくない。
まずは、その会社がどんな仕事をしているのか。
何に時間がかかっているのか。
どんな問題を抱えているのか。
そこを整理するのが先だと思っている。
例えば、毎日Excelに同じデータを入力している。
メールで届いた注文を、別のシステムに手作業で登録している。
担当者が休むと、仕事の進み具合が分からなくなる。
そんな仕事があれば、AIを使う前に業務の流れを見直すだけでも改善できることがある。
そのうえで、AIに任せられるところは任せればいい。
何もすべてをAIに置き換える必要はない。
それに、AIを導入したら終わりというわけでもない。
社内情報をどう扱うのか。
誰がAIの操作を確認するのか。
問題が起きたときに、どう対応するのか。
今回のPHPの問題を見ても分かるように、新しい技術を使うことと、
それを安全に運用することは、セットで考えなければならない。
これは昔からシステムの仕事をしてきた僕らにとって、当たり前のことでもある。
何をするかより、誰と組むか
僕は長いことITの仕事をしてきた。
パソコンが普及し、インターネットが当たり前になり、ホームページや業務システムも大きく変わってきた。
そのたびに、新しい技術を覚え、仕事のやり方を変えてきた。
今回のAIも同じなのだろうけれど、変化の速さはこれまでとは比べものにならない。
だからといって、新しい技術が出るたびに振り回されていても仕方がない。
僕が以前から大切にしているのは、何をするかより、誰と組むかということ。
ホームページを作ることも、システムを導入することも、AIを使うことも、
すべてはお客様の仕事をより良くするための手段だ。
お客様が何に困っているのか。
これから会社をどうしていきたいのか。
そのために何が必要なのか。
そこを一緒に考えて、実際に形にしていく。
それが僕らの仕事だと思っている。
もちろん、今までの経験だけで仕事ができるとは思っていない。
新しい技術は自分たちでも使ってみる。
良いものは取り入れる。
問題があれば、その原因を調べて対処する。
結局、これまでやってきたことと基本は同じなんだよね。
ただ、使える道具と、その進化の速さが大きく変わった。
さて、来年はどうなっているんだろう
20年前に夢見ていた世界が、もう目の前まで来ている。
今年6月からの変化を見ていると、来年の今頃を予想することさえ難しい。
ひょっとしたら、今こうして書いているブログだって、
AIが日々の仕事を見ながら下書きしてくれるようになるかもしれない。
まあ、僕の言いたいことまで勝手に書き換えられては困るけれど(笑)。
新しい技術を取り入れながら、今ある仕組みも大切にする。
そして、変化に合わせて自分たちの仕事も見直していく。
企業にとって、これからますます大切になることだと思う。
売れるITサービス社でも、AIの導入だけでなく、既存のシステムやWebサイトの運用、
業務の見直しまで含めて、お客様の仕事を支援している。
AIを導入してみたい。
今の業務をもっと効率化したい。
社内のIT環境を一度見直したい。
そんな相談があれば、まずは今の状況を聞かせてもらいたい。
何か新しいものを入れることが、必ずしも正解とは限らないからね。
さて、来年の今頃、僕らはどんな仕事をしているんだろう。
この変化は、ちょっと楽しみでもある。
