中小企業に必要なのは、
「自社の事情を分かっているIT担当」かもしれない
この連載も80回になった。
だからといって、今回は記念回らしい話を書くつもりはない。
最近、お客様からいろいろな相談を受けながら、あらためて考えていることがある。
中小企業にとって、本当に必要なITの相談相手って何だろう。
今回はそんな話を書きます。
ITについて相談できる場所は増えた
商工会や商工会議所、金融機関、自治体、各種支援団体。
今は、中小企業がITについて相談できる場所がたくさんある。
DX相談、IT導入相談、補助金相談、専門家派遣。
しかも無料で相談できるものも多い。
これは中小企業にとって、とてもありがたい仕組みだと思う。
いきなりIT会社へ問い合わせるほどでもない。
何を頼めばいいのか分からない。
そもそも、それがITの問題なのかどうかも分からない。
そんなときに、まず話を聞いてもらえる場所があることには大きな意味がある。
無料相談は、ITについて考え始める入口として、とてもいい仕組みだと思う。
でも、一度の相談だけでは答えが出ないことも多い
ただ、ITの相談には少し難しいところがある。
例えば、
「ホームページを作り直した方がいいですか?」
という相談があったとする。
一般論なら、それなりに答えられる。
デザインが古い。
スマートフォンで見にくい。
更新されていない。
セキュリティにも不安がある。
それなら、そろそろリニューアルを考えましょう、という話になる。
でも、本当にその会社が今ホームページを作り直すべきなのか。
これは別の話だ。
問い合わせはどこから来ているのか。
ホームページで何に困っているのか。
更新する人はいるのか。
営業はどうしているのか。
予算はいくらなのか。
今、本当にそこへお金を掛けるべきなのか。
そこまで分からないと、僕なら簡単に「作り直した方がいいです」とは言えない。
一般論として正しい答えが、自社に正しいとは限らない
これはAIの導入でも同じだ。
「うちもAIを入れた方がいいですか?」
最近は、こんな相談も増えた。
AIを使えば業務を効率化できる。
文章も作れる。
資料も作れる。
調査にも使える。
確かに便利だ。
でも、そこでいきなり
「AIを導入しましょう」
では少し乱暴だと思う。
何の仕事に使うのか。
誰が使うのか。
現在どんなソフトを使っているのか。
どんな情報を扱っているのか。
社内にITが得意な人はいるのか。
そもそも、AIを入れることで本当に仕事が楽になるのか。
そこまで見ないと、その会社にとっての答えは出せない。
一般論として正しい答えと、自社にとって正しい答えは、必ずしも同じではない。
必要なのは「自社の事情を分かっているIT担当」
長くお付き合いしているお客様から相談を受けると、
「それなら、今はやらなくてもいいと思います」
「そこは早めに直した方がいいです」
と答えることがある。
最新の技術を知っているから言えるわけではない。
その会社の事情をある程度分かっているからだ。
どんな仕事をしているのか。
誰がパソコンを使っているのか。
どんなシステムを使っているのか。
以前どんなトラブルがあったのか。
どこにはお金を掛けたいのか。
どこには掛けたくないのか。
そういうことを少しずつ分かっている。
だから、単純に「最新だから」「便利だから」という理由だけでは勧めない。
その会社なら、どうするのが一番いいか。
そこから考える。
「何を買うか」より「それ、本当に必要?」
ITの世界には、次々と新しいものが出てくる。
新しいAI。
新しいクラウドサービス。
新しいセキュリティ製品。
新しいシステム。
それを見るたびに、
「これを導入しましょう」
と言うことは簡単だ。
でも、中小企業に本当に必要なのは、何かを売ってくれる人だけではないと思う。
「それ、本当に必要ですか?」
と一緒に考えてくれる人も必要だ。
100万円のシステムを入れなくても、今使っているExcelを少し直せば済むかもしれない。
ホームページを全面リニューアルしなくても、問い合わせフォームと数ページを直せば十分かもしれない。
新しいAIサービスを契約しなくても、今使っているサービスの機能で足りるかもしれない。
ITでは、新しいものを入れることだけが正解ではない。
やらない。
まだやらない。
今あるものを使う。
それも立派な判断だと思う。
無料相談は入口。その先を誰と考えるか
無料相談の仕組みは、これからも必要だと思う。
最初の相談相手として、とても大事な存在だ。
ただ、相談したあとには必ずと言っていいほど、次の話が出てくる。
「じゃあ、実際にどうする?」
誰に頼むのか。
どこまでやるのか。
いくら掛けるのか。
今やるのか。
来年でいいのか。
ここから先になると、その会社の事情を分かっている人がいた方が話は早い。
だから最近、
「ITに詳しい人」より「自社の事情を分かっているIT担当」
の方が、中小企業には必要なんじゃないかと思うようになった。
僕が考える「外部IT担当」
僕は以前から「外部IT担当」という言葉を使っている。
ホームページ制作だけをするわけでもない。
パソコン修理だけをするわけでもない。
コンサルティングだけでもない。
何か困ったときに、
「とりあえず聞いてみよう」
と思ってもらえる存在。
相談を受けて、僕ができることなら僕がやる。
専門業者が必要なら、そう伝える。
今やる必要がないなら、
「今はやらなくてもいいですよ」
と言う。
そんな立ち位置だ。
派手な仕事ではない。
何か一つの商品を売っているわけでもない。
でも中小企業のITでは、こういう人が一人いるだけで、無駄な投資や余計なトラブルを減らせることもある。
ITが簡単になったからこそ、判断が難しくなった
僕が独立してから、ITの世界はずいぶん変わった。
ホームページは自分でも作れるようになった。
クラウドサービスも増えた。
分からないことは検索すれば、かなりのところまで自分で調べられる。
そして今はAIに聞けば、多くのことを教えてくれる。
僕が独立した頃と比べれば、
「IT業者に頼まないとできないこと」
は確実に減ったと思う。
でも、その一方で選択肢はものすごく増えた。
できることが増えたからこそ、
「で、結局うちはどうすればいいの?」
という判断が難しくなっている。
だから、これからのIT担当に必要なのは、何でも自分で作れることだけではないのかもしれない。
その会社の事情を分かったうえで、
「今はこれでいいと思います」
と言えること。
必要なら、その先まで一緒にやること。
無料相談も大切。
専門業者も大切。
AIも便利。
でも最後に、
「うちの場合はどうする?」
を一緒に考える人がいる。
中小企業にとっては、そんな外部IT担当が一人いることに意味があるんじゃないかと思っている。
