連載|地方企業のリアルIT相談室 第48回

営業に行ったのに、パソコンを直して帰ってきた。

「売れるITサービス社」という会社名だからでしょうか。

お客様からは、「パソコンに詳しい会社」というイメージを持っていただいているようです。

だから営業で訪問すると、こんなことがよくあります。

「その前に、ちょっとこのパソコン見てもらえる?」

メールが送れない。

プリンターが印刷できない。

パソコンの動きが遅い。

Windowsの更新で止まってしまった。

気が付けば営業資料をバッグから出すこともなく、パソコンを触って帰る日があります。

「今日は営業に来たんだけどな。」

そんなことを思いながら車に乗ることもあります。

でも、不思議なんです。

営業の説明をたくさんした日よりも、パソコンを直して帰った日のほうが、その後に相談をいただくことが多いんです。

パソコンを触っていると、自然と雑談が始まります。

「最近どう?」

「社員が辞めちゃってね。」

「ホームページから問い合わせが減ってきたんだよ。」

「AIって実際どうなの?」

気が付けば、パソコンの話は終わっていて、会社の未来や経営の話になっています。

そんな時、お客様から言われることがあります。

「玉田さんにしに来たんでしたっけ?」

その言葉を聞くたびに、少し照れくさくなります。

でも、今ならその意味が少し分かる気がします。

ホームページを作ること。

パソコンを直すこと。

AIを導入すること。

それらは目的ではなく、お客様が前へ進むための手段なんですよね。

だから僕も、「何を売ろうか」ではなく、「何に困っているんだろう」と考える時間のほうが長くなりました。

最近は生成AIの相談も本当に増えました。

僕自身も毎日のようにAIを使っています。

文章を書いたり、調べものをしたり、アイデアを整理したり。

仕事には欠かせない存在です。

この前まで試していたFable 5も、とても優秀なAIでした。

無料期間が終わるタイミングで、「どうしようかな」と少し考えました。

でも今回は課金しないことにしました。

AIが不要になったわけではありません。

今使っているAIだけでも十分仕事ができるようになってきたからです。

それよりも、お客様のところへ行く時間を増やしたい。

「ちょっと見て。」

その一言に応えられる時間を大切にしたい。

そんなふうに思うようになりました。

AIはどんどん進化しています。

これからもっと便利になるでしょう。

でも、お客様の表情を見ながら話を聞き、その場で一緒に考える時間は、まだAIには代われません。

営業に行ったのに、パソコンを直して帰ってくる。

一見すると営業になっていないように見えます。

でも、そんな日があるからこそ、また「玉田さん、ちょっと来て。」と声を掛けていただける。

もちろん、僕も本音を言えば、もっと大きな仕事がしたい。

会社全体のDXやAI活用、新しい事業づくりや経営の仕組みづくり。

そんな仕事にもっと時間を使いたいと思っています。

でも、その入口は意外と小さな困りごとなんです。

一台のパソコンを直すこと。

一つのホームページを改善すること。

一つの相談に耳を傾けること。

その積み重ねが、やがて会社全体を変える仕事につながっていく。

だから僕は、今日も「ちょっと見て。」を大切にしています。