連載|地方企業のリアルIT相談室

第66回

不安を売る仕事にはしたくない

少し前に、WordPressの脆弱性について注意喚起を出した。

内容を見る限り、これは一度確認したほうがいいと思ったし、実際に何件か相談もあった。

ただ、相談があったからといって、全部が大きな問題だったわけではない。

更新状況を確認したり、使っている環境を見たりして、今すぐ大きな作業を
しなくてもよさそうなところもあった。

正直に言えば、仕事になればありがたい。

こちらも会社をやっているので、相談だけで終わるより、
作業につながったほうがいいに決まっている。

でもさ、そこで必要以上に不安をあおってまで仕事にするのは違うと思う。

強い言葉を使えば、仕事にはなる

「このままだと危険です」

「すぐに対応しないと大変なことになります」

「情報が漏れるかもしれません」

こういう言い方をすれば、ITに詳しくない人は不安になる。

WordPressとか、脆弱性とか、不正アクセスとか言われても、普通はよく分からない。

よく分からないから専門家に聞く。

そこで専門家が強い言葉を使えば、相手は信じるしかない。

だからこそ、そこはちゃんとしないといけないと思う。

危ないものは、危ないと伝える。

確認したほうがいいものは、確認したほうがいいと言う。

ただ、確認した結果、今すぐ大きな対応は必要ないなら、そう伝えればいい。

全部まとめて危険だと言って、何でも作業にするのは違う。

不安にさせる言葉はいくらでもある

今回のWordPressの件だけではない。

パソコンが古い。

サーバーが古い。

ウイルス対策が弱い。

バックアップがない。

AIを使っていない。

DXが遅れている。

ITの世界には、不安にさせようと思えば、いくらでも使える言葉がある。

もちろん、本当に危ないこともある。

古いパソコンやシステムを、そのまま使い続けるのが危険な場合もあるし、
すぐに対応したほうがいい会社もある。

だから、何もしなくていいと言っているわけではない。

問題は、その会社の状況を見ずに、同じような話をして、
同じようなものを売ることだと思う。

会社によって必要なものは違う

扱っている情報も違う。

ホームページが止まったときの影響も違う。

予算も違う。

社内に詳しい人がいるかどうかも違う。

それを見ずに、「これを入れないと危険です」と言われても、
本当にそうなのかは分からない。

僕のところにも時々、こんな相談が来る。

「業者からこう言われたんですけど、本当に必要ですか」

見積もりを見てみると、全部が無駄なわけではない。

必要なものもある。

ただ、今すぐ全部やらなくてもいいんじゃないかと思うものまで、
一緒に入っていることもある。

頼む側は分からない。

分からないから、プロに聞いている。

そこを利用したら駄目だと思う。

やらなくていいことも伝える

やったほうがいいことは、やったほうがいいと言う。

今すぐやらなくてもいいことは、後でもいいと言う。

予算がなければ、優先順位を決める。

今回は何もしなくても大丈夫なら、そう言う。

それで仕事にならないこともある。

今回のWordPressの件も、相談はあったけれど、大きな仕事にはならなかった。

ちょっと残念だと思う気持ちがないわけではない。

仕事だからね。

でも、実際に大きな問題がなくて、必要のない作業までやらずに済んだなら、
それでよかったと思う。

危険な情報を知らせることと、
不安を売ることは違う。

最近は、AIもセキュリティもシステムも、どんどん分かりにくくなっている。

分からないことが増えれば、相談する側の不安も増える。

その不安を利用して仕事を取るのではなく、何が必要で、
何が必要ではないのかを整理する。

僕の仕事は、そっちだと思っている。

仕事にはしたい。
でも、不安をあおってまで仕事にはしたくない。

当たり前の話だけど、これからは、こういう当たり前のことがもっと大事になるんじゃないかな。