連載|地方企業のリアルIT相談室 第53回

便利になっても、変わらないもの。

先日、Suicaのシステム障害のニュースを見ました。

詳しい原因は分かりませんが、ニュースを見ながら20代の頃のシステム開発を思い出していました。

あの頃は、とにかく毎日が忙しかった。

徹夜なんて当たり前。

始発で家に帰ってシャワーを浴び、着替えてまた10時には会社へ出社。

今なら間違いなく怒られる働き方です(笑)。

でも、それだけ一つのシステムに対する責任は重かったんです。


現場には、みんなが陰で「鬼軍曹」と呼んでいた先輩がいました。

障害が起きると、必ず始まるんです。

「原因は?」

「それは現象だ。」

「なぜそうなった?」

「その前は?」

「レビューでは気付けなかったのか?」

「テストは?」

気が付けば、「なぜ?」を何度も繰り返していました。

今でいう「なぜなぜ5回」です。

若い頃は正直、「また始まった……」と思っていました。


でも、それだけではありませんでした。

プログラムを書けば終わりではないんです。

設計書を書く。

プログラム仕様書を書く。

テスト仕様書を作る。

テスト結果を残す。

修正履歴を記録する。

レビューを受ける。

ドキュメントを書く時間の方が長いんじゃないかと思うこともありました。

当時は、「なんでこんなに面倒なことをするんだろう」と思っていました。

でも今なら分かります。

あれは書類を作ることが仕事だったわけではありません。

品質を守るための仕組みだったんです。


最近は、AIでプログラムを書くことも増えました。

僕も毎日のように使っています。

本当に便利です。

でも、AIが書いたコードをそのまま使うことはありません。

必ず内容を確認し、実際に動かし、自分の考えた通りに動くかを確かめます。

便利な時代だからこそ、確認する人の責任は、むしろ大きくなったように感じます。

あの頃の鬼軍曹は、プログラムの書き方を教えていたんじゃありません。

「事故を起こさない技術者」を育てていたんですね。

Suicaのニュースを見ながら、そんな昔の現場を思い出していました。

今日は月曜日。

今から現場へ行ってきます。

AIを活用する仕事が増えた今でも、お客様へお渡しする前には、自分の目で確認する。

あの頃、鬼軍曹に叩き込まれた「確認することの大切さ」は、今も変わらず僕の仕事の基本です。